• 百人一首一覧

  • Last Update: 2016-12-04
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001 桃16 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ あきのたの かりおのいおの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ あきの 天智天皇 てんじてんのう
002 黄01 春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま はるす 持統天皇 じとうてんのう
003 青01 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む あしびきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん あし 柿本人麻呂 かきのもとのひとまろ
004 桃17 田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士のたかねに 雪は降りつつ たごのうらに うちいでてみれば しろたえの ふじのたかねに ゆきはふりつつ たご 山部赤人 やまべのあかひと
005 青04 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき おく 猿丸大夫 さるまるだゆう
006 青07 鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける かさ 中納言家持 ちゅうなごんやかもち
007 黄02 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも あまの 安倍仲麿 あべのなかまろ
008 緑01 わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり わがいおは みやこのたつみ しかぞすむ よをうじやまと ひとはいうなり わがい 喜撰法師 きせんほうし
009 緑02 花の色は 移りにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせしまに はなのいろは うつりにけりな いたずらに わがみよにふる ながめせしまに はなの 小野小町 おののこまち
010 黄03 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関 これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おおさかのせき これ 蝉丸 せみまる
011 緑03 和田の原 八十島かけて 漕き出でぬと 人には告げよ あまのつりぶね わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね わたのはらや 参議篁 さんぎたかむら
012 青10 天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ おとめのすがた しばしとどめん あまつ 僧正遍昭 そうじょうへんじょう
013 桃18 筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる つくばねの みねよりおつる みなのがわ こいぞつもりて ふちとなりぬる つく 陽成院 ようぜいいん
014 青13 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに みち 河原左大臣 かわらのさだいじん
015 緑04 君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ きみがためは 光孝天皇 こうこうてんのう
016 桃13 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む たちわかれ いなばのやまの みねにおうる まつとしきかば いまかえりこん たち 中納言行平 ちゅうなごんゆきひら
017 緑05 ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは ちは 在原業平朝臣 ありわらのなりひらあそん
018 黄04 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ すみのえの きしによるなみ よるさえや ゆめのかよいじ ひとめよくらん 藤原敏行朝臣 ふじわらのとしゆきあそん
019 橙13 難波潟 短かき蘆の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや なにわがた みじかきあしの ふしのまも あわでこのよを すぐしてよとや なにわが 伊勢 いせ
020 緑06 わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ わびぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あわんとぞおもう わび 元良親王 もとよししんのう
021 橙07 今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな いまこんと いいしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな いまこ 素性法師 そせいほうし
022 桃14 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ ふくからに あきのくさきの しおるれば むべやまかぜを あらしというらん 文屋康秀 ふんやのやすひで
023 緑07 月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど つき 大江千里 おおえのちさと
024 青16 このたびは ぬさもとりあへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに このたびは ぬさもとりあえず たむけやま もみじのにしき かみのまにまに この 菅家 かんけ
025 橙11 名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな なにしおわば おおさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな なにし 三条右大臣 さんじょうのうだいじん
026 緑08 小倉山 峰の紅葉ば 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ おぐらやま みねのもみじば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなん おぐ 貞信公 ていしんこう
027 橙17 みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ みかのはら わきてながるる いずみがわ いつみきとてか こいしかるらん みかの 中納言兼輔 ちゅうなごんかねすけ
028 桃15 山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもえば やまざ 源宗于朝臣 みなもとのむねゆきあそん
029 緑09 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花 こころあてに おらばやおらん はつしもの おきまどわせる しらぎくのはな こころあ 凡河内躬恒 おおしこうちのみつね
030 青02 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし ありあ 壬生忠岑 みぶのただみね
031 青05 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき あさぼらけあ 坂上是則 さかのうえのこれのり
032 黄05 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり やまがわに かぜのかけたる しがらみは ながれもあえぬ もみじなりけり やまが 春道列樹 はるみちのつらき
033 黄06 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しずごころなく はなのちるらん ひさ 紀友則 きのとものり
034 桃10 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに たれをかも しるひとにせん たかさごの まつもむかしの ともならなくに たれ 藤原興風 ふじわらのおきかぜ
035 緑10 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににおいける ひとわ 紀貫之 きのつらゆき
036 緑11 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ なつのよは まだよいながら あけぬるを くものいずこに つきやどるらん なつ 清原深養父 きよはらのふかやぶ
037 黄07 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける しら 文屋朝康 ふんやのあさやす
038 緑12 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな わすらるる みをばおもわず ちかいてし ひとのいのちの おしくもあるかな わすら 右近 うこん
039 黄08 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき あさじうの おののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこいしき あさじ 参議等 さんぎひとし
040 桃11 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで しの 平兼盛 たいらのかねもり
041 緑13 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか こいすちょう わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもいそめしか こい 壬生忠見 みぶのただみ
042 緑14 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すえのまつやま なみこさじとは ちぎりき 清原元輔 きよはらのもとすけ
043 橙04 逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり あいみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもわざりけり あい 権中納言敦忠 ごんちゅうなごんあつただ
044 橙05 逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし おおことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし おおこ 中納言朝忠 ちゅうなごんあさただ
045 橙03 哀れとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな あわれとも いうべきひとは おもおえで みのいたずらに なりぬべきかな あわれ 謙徳公 けんとくこう
046 黄09 由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな ゆらのとを わたるふなびと かじをたえ ゆくえもしらぬ こいのみちかな ゆら 曽禰好忠 そねのよしただ
047 黄10 八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり やえむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり やえ 恵慶法師 えぎょうほうし
048 桃12 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな かぜをいたみ いわうつなみの おのれのみ くだけてものを おもうころかな かぜを 源重之 みなもとのしげゆき
049 橙16 みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ 物をこそ思へ みかきもり えじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもえ みかき 大中臣能宣朝臣 おおなかとみのよしのぶあそん
050 青08 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな きみがため おしからざりし いのちさえ ながくもがなと おもいけるかな きみがためお 藤原義孝 ふじわらのよしたか
051 桃07 かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしもしらじな 燃ゆる思ひを かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもいを かく 藤原実方朝臣 ふじわらのさねかたあそん
052 橙01 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな あけぬれば くるるものとは しりながら なおうらめしき あさぼらけかな あけ 藤原道信朝臣 ふじわらのみちのぶあそん
053 橙10 嘆きつつ ひとりぬる夜の 明くる間は いかに久しき 物とかは知る なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる なげき 右大将道綱母 うだいしょうみちつなのはは
054 緑15 忘れじの 行末までは かたければ けふをかぎりの 命ともがな わすれじの ゆくすえまでは かたければ きょうをかぎりの いのちともがな わすれ 儀同三司母 ぎどうさんしのはは
055 黄11 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なおきこえけれ たき 大納言公任 だいなごんきんとう
056 橙06 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの あふこともがな あらざらん このよのほかの おもいでに いまひとたびの おおこともがな あらざ 和泉式部 いずみしきぶ
057 青11 めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな めぐりあいて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よわのつきかな 紫式部 むらさきしきぶ
058 桃08 有馬山 ゐなの篠原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする ありまやま いなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやわする ありま 大弐三位 だいにのさんみ
059 緑16 やすらはで 寝なましものを 小夜ふけて 傾ぶくまでの 月を見しかな やすらわで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな やす 赤染衛門 あかぞめえもん
060 黄12 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立 おおえやま いくののみちの とおければ まだふみもみず あまのはしだて おおえ 小式部内侍 こしきぶのないし
061 青14 いにしへの 奈良の都の 八重ざくら けふ九重に にほひぬるかな いにしえの ならのみやこの やえざくら きょうここのえに においぬるかな いに 伊勢大輔 いせのたいふ
062 青17 夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ よをこめて とりのそらねは はかるとも よにおおさかの せきはゆるさじ よを 清少納言 せいしょうなごん
063 橙08 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな いまはただ おもいたえなん とばかりを ひとづてならで いうよしもがな いまわ 左京大夫道雅 さきょうのだいぶみちまさ
064 橙02 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々のあじろ木 あさぼらけ うじのかわぎり たえだえに あらわれわたる せぜのあじろぎ あさぼらけう 権中納言定頼 ごんちゅうなごんさだより
065 桃09 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ うらみわび ほさぬそでだに あるものを こいにくちなん なこそおしけれ うら 相模 さがみ
066 桃03 もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし もろともに あわれとおもえ やまざくら はなよりほかに しるひともなし もろ 前大僧正行尊 さきのだいそうじょうぎょうそん
067 橙14 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かいなくたたん なこそおしけれ はるの 周防内侍 すおうのないし
068 緑17 心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな こころにも あらでうきよに ながらえば こいしかるべき よわのつきかな こころに 三条院 さんじょういん
069 青03 嵐吹く 三室の山の 紅葉葉は 竜田の川の にしきなりけり あらしふく みむろのやまの もみじばは たつたのかわの にしきなりけり あらし 能因法師 のういんほうし
070 青06 さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこもおなじ 秋の夕暮れ さびしさに やどをたちいでて ながむれば いずくもおなじ あきのゆうぐれ 良暹法師 りょうぜんほうし
071 緑18 夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く ゆうされば かどたのいなば おとずれて あしのまろやに あきかぜぞふく ゆう 大納言経信 だいなごんつねのぶ
072 桃04 音に聞く たかしの浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ おと 祐子内親王家紀伊 ゆうしないしんのうけのきい
073 桃05 高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ たかさごの おのえのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなん たか 前中納言匡房 さきのちゅうなごんまさふさ
074 青09 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを うか 源俊頼朝臣 みなもとのとしよりあそん
075 青19 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あわれことしの あきもいぬめり ちぎりお 藤原基俊 ふじわらのもととし
076 青12 和田の原 漕ぎ出でてみれば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波 わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもいにまごう おきつしらなみ わたのはらこ 法性寺入道前関白太政大臣 ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん
077 橙09 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ せをはやみ いわにせかるる たきがわの われてもすえに あわんとぞおもう 崇徳院 すとくいん
078 黄13 淡路島 かよふ千鳥の なく声に いく夜ねざめぬ 須磨の関守 あわじしま かようちどりの なくこえに いくよねざめぬ すまのせきもり あわじ 源兼昌 みなもとのかねまさ
079 黄14 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいずるつきの かげのさやけさ あきか 左京大夫顕輔 さきょうのだいぶあきすけ
080 桃06 長からむ 心もしらず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ ながからん こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもえ ながか 待賢門院堀河 たいけんもんいんのほりかわ
081 黄15 ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる 後徳大寺左大臣 ごとくだいじのさだいじん
082 青20 思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり おもいわび さてもいのちは あるものを うきにたえぬは なみだなりけり おも 道因法師 どういんほうし
083 桃19 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる よのなかよ みちこそなけれ おもいいる やまのおくにも しかぞなくなる よのなかよ 皇太后宮大夫俊成 こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい
084 桃20 永らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみしよぞ いまはこいしき ながら 藤原清輔朝臣 ふじわらのきよすけあそん
085 黄19 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり よも 俊恵法師 しゅんえほうし
086 桃01 嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな なげけとて つきやはものを おもわする かこちがおなる わがなみだかな なげけ 西行法師 さいぎょうほうし
087 黄16 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆうぐれ 寂蓮法師 じゃくれんほうし
088 橙12 難波江の 蘆のかり寝の ひと夜ゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき なにわえ 皇嘉門院別当 こうかもんいんのべっとう
089 黄20 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする たまのおよ たえなばたえね ながらえば しのぶることの よわりもぞする たま 式子内親王 しきしないしんのう
090 橙18 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず みせ 殷富門院大輔 いんぷもんいんのたいふ
091 青15 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねん きり 後京極摂政前太政大臣 ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん
092 緑19 わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそしらね かはく間もなし わがそでは しおひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし わがそ 二条院讃岐 にじょういんのさぬき
093 緑20 世の中は つねにもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのおぶねの つなでかなしも よのなかわ 鎌倉右大臣 かまくらのうだいじん
094 黄17 み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり みよ 参議雅経 さんぎまさつね
095 橙19 おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖 おおけなく うきよのたみに おおうかな わがたつそまに すみぞめのそで おおけ 前大僧正慈円 さきのだいそうじょうじえん
096 黄18 花さそふ あらしの庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり はなさそう あらしのにわの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり はなさ 入道前太政大臣 にゅうどうさきのだいじょうだいじん
097 桃02 来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ こぬひとを まつほのうらの ゆうなぎに やくやもしおの みもこがれつつ こぬ 権中納言定家 ごんちゅうなごんていか
098 橙20 風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける かぜそよぐ ならのおがわの ゆうぐれは みそぎぞなつの しるしなりける かぜそ 従二位家隆 じゅにいいえたか
099 橙15 人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は ひともおし ひともうらめし あじきなく よをおもうゆえに ものおもうみは ひとも 後鳥羽院 ごとばいん
100 青18 ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なおあまりある むかしなりけり もも 順徳院 じゅんとくいん