競技かるた小説『ちはやふる中学生編』第2巻感想
では、『小説 ちはやふる 中学生編(著:時海結以
)』の第2巻の感想です。
小説には書かれていないコミックスの話題(第19巻まで)など、ネタバレありで書いていきます。
小学校卒業と同時に祖父の介護のため、地元・福井に戻ることになった綿谷新。
「かるたを続けてたら、また絶対会える」遠く離れたかるた仲間の千早・太一と交わした約束を胸に刻み、新は永世名人である祖父の「かるた」を再現するため練習に励む。
しかし厳しすぎる現実が、新を絶望へと追いつめていく。
新にいったい何があったのか?これが、末次由紀が描きたかったエピソード。
まぶしすぎる青春かるた小説、第二弾!!
目次
序章 人には告げよ
一 いまひとたびの
二 富士の高嶺に
三 知る人にせん
四 夜半の月かな
五 沖つ白波
六 またこのごろや
七 名こそ流れて
今回もサブタイトルは全て百人一首に関する言葉ですね。対応する百人一首とその取札を書いておきます(『いまひとたびの』『夜半の月かな』の句が含まれた歌はそれぞれ2首ずつありますが、話の内容に相応しい方を選んでいます)。
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの あふこともがな (和泉式部)
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ (山部赤人)
誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに (藤原興風)
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな (紫式部)
和田の原 漕ぎ出でてみれば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波 (法性寺入道前関白太政大臣)
永らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき (藤原清輔朝臣)
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ (大納言公任)

名人戦・クイーン戦
新がおじいちゃんと名人戦・クイーン戦をテレビで見ているシーンは、マンガでも少し描写がありました。そのときは詳しく描かれていなかったのですが、対戦組み合わせは、
【名人戦】
三木名人(三連覇中) - 周防久志
猪熊遥(四連覇中) - 高橋涼子(宮城県)
となっていたようです。そして、どちらも挑戦者が勝利。また、猪熊さんは四連覇達成時に『千原遥』と呼ばれていたので、結婚後初の防衛戦で敗退してしまったようです。
競技シーンについて
では、このブログではお馴染みとなってきたというか、競技者目線で競技シーンについて書いていきます。
佐藤先生との対戦
新と佐藤先生との対戦。『ひ』を渡り手するシーンがあります。
『ひ』で始まる札は三枚、すべて新が持っていた。『ひさ』と『ひとも』が上段右端、『ひとは』が左端。
渡り手で、『ひ』だけ聞いて先に右を払う。『ひさ』だった場合、これで勝ちになる。『ひと』だった場合、『ひとも』より『ひとは』の方が、新は早く反応する自信がある。もちろん左にも渡って払うのだが、万一わずかに渡りが遅れたとしても、『は』まで聞いて相手が出るのなら、その対決には絶対負けない。
競技かるたについてよく取材されているなという印象ですが、渡り手をしようとしている選手の思考回路としては少し違和感があります。
まず、『ひ』で右を払うのは良いのですが、渡り手を行うつもりであればすぐに左側に手を動かすはずです。左側の札を払う前に『ひさ』が読まれたと判断出来れば、途中で手を止めることがあるかもしれませんが、『ひと』であれば三文字目が何であろうと払い飛ばすはずです。だから、このシーンでは三文字目の反応速度にはあまり意味がありません。また、『ひ』が読まれた時点で新の陣に札があることが確定するので、実力者である佐藤先生が三文字目まで聞くということは考えづらいです。
須藤暁人との対戦
中学3年生の須藤暁人との対戦でのシーン。新の自陣にある『た』の札は3枚。それを序盤から渡り手で取ろうと決めていたようです。『た』の札は全部で6枚あるので、お手つきしたときの送り札を考えるとかなり分が悪い戦法です。
渡り手は基本的に、同じ陣にくっつけて置けば決まり字が短くなる札が、左右に分けて置かれている場合に用いられる取り方です。『た』の3枚だけが新の陣にあったとしても決まり字は短くならないので、序盤から渡り手で取るような局面ではないです。新はまだ、渡り手について詳しく理解していないのかもしれません。
河内翔二との会話
中学2年になって、初めて翔二の存在を知った新。同じ中学校校区でかるたをやっている者同士なのに、全く知らなかったということで、もしかしたら翔二は中学になってかるたを始めたのかもしれません。そのとき翔二から、
団体戦の先鋒か主将、おまえにまかせる気やったらしい
と言われますが……競技かるたの団体戦は複数人が同時に試合を行うので、『主将』は存在していても『先鋒』は存在しません。もしかしたら、先鋒が存在する特殊な形式の団体戦も存在するのかもしれませんが、普通はありません。
甘糟那由多との対戦
またもや北央中学の生徒と大会で当たった新。やたらと『あ』の札が多い試合のようでした。1首目に読まれた札は『あり』の札。
新は『り』のr音が聞こえるかどうかのうちに、敵陣に並んでいた『あし』『あり』、二枚の『あら』を全部まとめて払おうとした。
この表現は少し違和感があります。『あら』を2枚だと書いているので、『あり』も同じように2枚だと書かないとおかしい気がします。もしかしたら、『あり』を2字決まりと勘違いして書いてしまったのかもしれません。
武村敬一との対戦
新は中学時代に色んな選手と出会い、対戦していたんですね。この試合では『よ』を渡り手するシーンがあります。
新が『よのなかは』『よのなかよ』『よも』の三枚を持ち、武村には『よ』始まりはない。すでに『よを』は空札として出ている。
<中略>
迷わず新は<よ>の声と同時に右中段の『よも』を払った。続けて『よのなか』の二枚を払い――だが武村は、またしても『よのなか』の二枚を、お手つき覚悟で払っていた。
佐藤先生との試合での『ひ』と同様、一文字目が読まれた時点で新の陣に札があることが確定します。だから、武村さんはお手つき覚悟ではないはずです。
また、相手陣にくっつけてある『つく』『つき』を二文字目の聞き分けで払って取っていますが、一文字目で反応できたのであればそのまま両方払いに行くはずです。
渡り手について
読んでいくと、試合のシーンは新の渡り手をメインとして進められていましたが、上位のB級選手がやる戦術にしては違和感がある描写が多かったです。多分、新の考え方で試合をやっていたら、お手つきがかなり多くなってしまうのではないでしょうか。おそらく、千早よりも(笑)
感想まとめ
第1巻では原作では全く書かれていない内容が結構多かったように思えました。しかし、この第2巻ではかなり原作に沿って書かれているように感じました。随所に「このシーン見たことある」という場面があり、後に出会う選手たちが登場していたのが面白かったです。
どうしても競技者目線で読んでしまうので、試合シーンに関しては厳しい見方をしてしまいましたが、話自体はとても楽しく読めました。原作での回想シーンを軸として、上手くまとめてあるなと思いました。
第3巻以降が書かれるかどうか分かりませんが、個人的には筑波くんの中学時代を書いて欲しいです。下の句かるたで活躍していた頃を。
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2 Comments
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いつも面白く見させてもらっております。
猪熊遥クイーンのモデルは北野律子クイーンと思われますので、結婚後敗退ではなく出産の為勇退なのではないでしょうか?
コメントありがとうございます。
ただ、挑戦者がクイーン位を奪取した旨が書かれているので、少なくとも小説の話の中では、猪熊さんが挑戦者の高橋さんに敗れているのは間違い無いと思います。