『瞬間の記憶力 競技かるたクイーンのメンタル術』の感想
競技かるたでは、クイーン位を通算5期つとめた選手には『永世クイーン』の称号が与えられます。現在、永世クイーンは3人いるのですが、2012年10月に渡辺令恵永世クイーンが『DVDでわかる百人一首競技かるた必勝のポイント』という本を出版されました。
[Amazon: 4780412218]そして、2012年12月には現在のクイーンである楠木早紀永世クイーンが『瞬間の記憶力 競技かるたクイーンのメンタル術』を出版されました。このところ、競技者が本を出版することが増えてきたように感じ、個人的にはものすごく嬉しいです。
それでは、感想記事をネタバレありで書いていきます。
作品紹介
競技かるたとは、文化とスポーツが融合した畳の上の格闘技“競技かるた”クイーンが初めて明かす誰よりも強くなった理由とは?!
競技かるたは、文化とスポーツが融合した「頭脳スポーツ」「マインド・スポーツ」。
鍛えれば性別や体格、年齢に関係なく、相手に勝つことができる平等な競技として、幅広い層から人気を集めている。
試合で並べられる50枚の札。直前に与えられた15分間ですべてを暗記する。札が減るごとに全体の位置が変わっていくが、その都度、瞬時に札の位置を記憶しなければならない――勝負は消去と暗記の繰り返しで決まる。
集中力、失敗した時の気持ちの立て直し方、切り替え方は日常生活でも役立つ。15歳から8年連続でクイーンの座を守る勝負脳の極意を伝授。
本書のターゲットは?
最初に本書が発売されると知ってタイトルを見たとき、競技かるたの暗記を一般化する「記憶術」の本なのかなと思いました。しかし、目次を見てバリバリの競技かるた本なんだなとすぐに理解できました。
目次
序章 三十一文字の熱き闘い
- 「競技かるた」ってどうやるの?
- 強くなるための五つの要素
- 誰にでも平等な競技
- 運命の戦い
- 極限状態で念じた札が詠まれる
- 史上最年少クイーン誕生
第一章 古の詩情にひたり記憶力を鍛える
- 誰でも「瞬間の記憶力」が高まる
- 試合開始前十五分の使い方
- 単純な暗記が楽しくなる方法
- 四週間で百人一首を暗記するコツ
- 記憶を強化させるためランダムに繰り返す
- 「一字決まり」の「む・す・め・ふ・さ・ほ・せ」
- 電光石火の取りの秘密は「決まり字」
- 暗記はスモールステップで確実に
- 札の好き嫌いに振り回されない
- 写真を撮ったように再現できる「画像認識能力」
- 脳をフル回転させる「動体記憶力」
- 覚えたことを消去していく能力
- かるた効果で集中力と暗記力が身につくわけ
第二章 王朝びとがいざなう深い集中
- 試合の始まりを告げる「序歌」
- 「感じの速さ」を身につける
- 「やる」と決めて一気にやるのがベスト
- 慣れておけば、周囲の雑音に惑わされない
- 競技かるたは視力より聴力
- 読手の癖を気にしない
- 直感で詠まれる札がわかるとき
- 疲れてきても集中力をいかに上げるか
- 無我の境地から生まれる高速の「取り」
- 目の前の相手は対戦者ではなく「自分」
第三章 雅の世界の苛烈なかけひき
- 至近距離で行われる心の攻防戦
- 「遠山の目付」を心がける
- 取り方にもかけひきがある
- 並べ方は自分の特性を活かした配置が大事
- 試合を優位に進める「攻めがるた」
- インスピレーションで決める送り札
- データよりも「今できることをやるしかない」
- 自分基準をもてば相手を気にし過ぎない
- 揉めたときは引き際を大切に
- 自分らしさを保つために心を乱さない
- こだわり過ぎると自分の悪い面が出やすい
第四章 「しづ心」を求めて
- 勝ちを意識すると隙や緩みが生じる
- 高揚する気持ちをコントロール
- 航海をイメージすると気持ちが落ち着く
- 焦りや動揺が自分のペースを乱す
- お手つきはメンタルの状態を写す鏡
- ピンチのときの気持ちの切り替え方
- 自分を客観視するための訓練
- 「験かつぎ」は心を落ち着かせる儀式
第五章 私の「みをつくし物語」
- 小倉百人一首かるたの歴史
- 百人一首ゆかりの地を訪ねて
- 意味はあとからついてくる
- 負けず嫌いは子どもの頃から
- 父と二人三脚の練習
- 父の役割、母の立ち位置
- 父が編み出したユニークな練習法
- 習い事はすべて役に立つ
- 最初で最後の反乱
- 団体戦の醍醐味
- 「一人練習」のメリット、デメリット
- 仲間に支えられて永世クイーンに!
第六章 「燃ゆる思ひ」をかるたにかけて
- 競技かるたの夢舞台、近江神宮
- クイーン戦ならではの緊張感
- 礼に始まり礼に終わる「かるた道」
- 女王たちの素顔
- 憧れの女王と対戦
- 競技かるた史上に残る名勝負
- 西郷直樹永世名人との対戦
- タイトルへの責任
- 練習は量より質
- 教え合い、与え合いながら成長したい
この目次を見るだけで、特に競技かるた経験者は読みたくなってくるのではないでしょうか?
競技かるたをよく知らない人にも丁寧に説明
前述のように競技かるたの話題が中心となっている本書ですが、非経験者が読んでも内容が理解できるように、専門用語などが出てきたときには丁寧に説明がされてます。脚注で簡単に説明されているのではなく、本文で著者の言葉で丁寧に説明されているので、どのようなものか理解しやすくなっているかと思います。
『ちはやふる』のシーンを多く引用
本書では、競技かるたでの出来事を、競技かるたマンガ『ちはやふる
(作:末次由紀
)』のシーンを引用している場面が多いです。数えていませんが数十回出てきたような気がします。『ちはやふる』のキャラクターたちの試合中の心情や戦術など、競技者目線で詳しく書かれています。
『ちはやふる』を読んで競技かるたに興味を持ち、当ブログに辿り着いたという方は結構いらっしゃるようですが、そのような方々にはぜひ本書を読んでいただきたいと思います。現実世界の最年少クイーンが『ちはやふる』について言及しているので、はっきり言って当ブログよりもずっと見る価値がありますよ(笑)
ひとつだけ訂正が……
本文の中で、『クイーン戦はユーチューブで流れる』と書かれている箇所がありましたが、正しくは『UStream
(ユーストリーム)』です。2011年までは名人戦・クイーン戦が衛星放送で放送されていましたが、2012年はUStreamにてネット配信されました。なお、2013年はニコニコ生放送
にて配信される予定です。
感想まとめ
本書を読んで感じたことはたくさんあります。ありすぎて上手く書き表すことは出来ません。ただ、これだけは言っておきます。競技かるたをやっている人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。学生には特に。
競技かるたは1907年にルールが制定され、それから100年余りが経ちました。戦前は競技かるたの戦術等に関する本も色々と出版されていたようですが、その時代に比べると現在ではあまり競技かるた本が出版されていないように感じます。その中で出版されたこの一冊。現在入手できる競技かるた本の中では、最も経験者が読んでためになる本だと思います。
また、競技かるたの世界に少しでも興味を持っている方、『ちはやふる』が好きだという方、最年少で日本一に輝いた選手の想いを読んでみたい方にもオススメです。非常に読みやすい文章で、競技かるた経験者にしか分からないような内容や表現は極力排除されているように感じました。
個人的には、本書に触発された競技者たちが、様々な本を執筆するようにならないかと期待しています。皆様、どうぞよろしくお願いいたします(笑)
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